2011年度と2012年度に、奄美大島の宇検村で、オリジナルの民話をつくり劇にするワークショップをやりました。
できあがった話は6本。そのうちの4本を既にこのブログに掲載しています。
→ 『岩とポインセチアとパパイヤ』 (2011年度 久志小中学校)
→ 『校門の横のガジュマル』 (2011年度 名柄小中学校)
→ 『裏山の二本の松』 (2011年度 久志小中学校)
→ 『廊下のつきあたりから見えるヤシの木』(2012年度 名柄小中学校)
学 校のなかやまわりにある、気になる物や場所の、嘘っぱちの、じゃなくて架空の由来を民話化しました。例えば、二本絡まって立っている木があっ たら、それは昔仲良しだった夫婦が木になったもので、なんで木になってしまったかというと……。というようなことを、グループで話し合いながら創作してい くわけです。上記の4つの物語、タイトルが場所や物体の名前になっているのはそういう理由。
さて、上の4つのお話を読んで頂けるとお気づきになるかと思いますが、どれも8つのブロックにわけられています。
もちろん自然とそうなわったわけではありません。どういうことかというと……。
まず「由来を語る民話」の大きな構造としてはこうです。図にしてみました。(クリックで拡大)
この「なにかが起きる」の中身こそが、物語そのものです。ここを、グループでわいわい話し合って創作していくわけです。
でもこれだけだとまだ大ざっぱです。子どもたちも、途方にくれたり迷走したりするはず。「現在の状態」までたどり着けないかもしれません。そもそも話し合いにならないだろうと思われます。グループ創作不可能状態。
なので、もう少しステップを細かくしてあげる必要があります。宇検村でやったワークショップでは、私の目が充分届きかつ丁寧に進められる環境だったので、それなりに細かくしました。8段階です。
オリジナル民話の構造 – 8ステップ版
- 前段 (=話の前ふりとして「現在の状態」の紹介)
※今そこはどんな状態か
※ここはあとまわしでよい - 登場人物の紹介
「昔々(1)の場所には、○○○(登場人物)がおりました。」
※さらにその特徴、その場所の様子など - ことが起きる
「あるとき、」 - そしてどうなる?
「そこで、○○○は、」 - さらにその展開
※例えば神様が登場して話がさらに動く - 大きな出来事が起きる
※例えば神様がしたことと、その結果 - 6の結果どうなったか
※6が起きた結果、さらにどうなったか - その後の様子
※7の後日談と、現在のその場所の様子
筋を考える前の段階として、1と8、すなわち現在の状態は、すでに決まっていなければなりません。なので実際に子どもたちが頭をひねるのは、2から8までの流れです。
この8段階はワークシート化しました。子どもたちはワークシートの指示を追いながら、ひと段階ずつ、話し合って中身を決めていきます。
で、8まで行くと、荒いプロットのできあがり、というわけです。いったんプロットができてしまえば、文章に起こしたり、各場面ごとの紙芝居やパフォーマンスをつくったり、お芝居の台本にしたり、思いのまま。
このように、私がやるグループ創作のワークショップでは、「最初に全体の構造を決めておく」ことが肝になっています。全体の構造が決まっていれば、あとは構造の構成部品を、一つ一つ作っていけばよいだけになります。
また、一度に考えなきゃいけないことの量を可能な限り減らしてやる、というリードも重要です。いきなり「お話つくれ!」ではまず無理ですが、「最初は誰がいたの?」「その人はまず何をした?」「その次どうなったの?」と、ステップに分けてあげることで、全体としては複雑なストーリーを、グループの話し合いでつくることが可能になります。この辺は、大人も子供も関係ないように思います。
そういう仕掛けでした。
宇検村では8段階に分けましたが、4~5段階とかでもよいように思います。実際、5段階でやった事例もあります。
もちろん少ない方が、講師側も子供たちも、楽です。
あと、今回は省略しましたが、話づくりの前の段階も、もちろんあります。1回ぶんかけて、こんなことをやっています。
1回目の概要
- 場所を決め、実際にそこに行き、観察する。
- 創作スターターをつくる。(この場合、絵などに起こす)
- 創作スターターを眺め、どんな由来がありそうか漠然と話し合う。
- その場所がそうなる前、どんなだったか、想像をふくらませて話し合う。
- 4を受け、登場人物や大まかなシチュエーションを決める。
- 時間の許す限り、だいたいどんなことが起きたのか、話し合う。
- グループごとに発表(状況の報告)。講師(この場合、私)は質問をしたり、発表を受けて思いついたことを話したりする。
今回紹介したプロットづくりは、ワークショップ全体でいうと、2回目の内容になります。
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