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百間土手(いわき市)について(丹後沢の話の続き)

いわき周辺の観光案内コーナー! じゃない、次回作品の参考のために、ちょっとしたまとめをする自分用エントリです。
前回も書いたけど、儂は嘘つき。以下の文章も、次回作品用のつくりが混じっているかも。なので、地域史として引用して恥をかいても責任は持ちませぬ。
ただ、思うんだけど、伝説とか昔話って、口伝の過程で話者のノリで変化していったハズ。と考えると、伝説の正しい伝え方かもね、こういうのも。

前回はこれ。
丹後沢(いわき市)についての伝説

前回(↑)あらすじ。
鳥居忠政が平城を築城しようとした。難工事の壕に「丹後」という名の年寄りを人柱にすることに。丹後は人柱になる代わりに、地名に自分の名前を残すこと、孫の弥蔵を取り立てることを願い出て、了承された。人柱を立てたことで、工事はうまくいった。

さてさて。
丹後の孫の弥蔵である。
弥蔵は病弱で、なにかと理由を見つけては怠けたがる若者だった。

鳥居忠政丹後との約束を守り、弥蔵を百石取りの山代官として抜擢した。別の土地に働きに出ていたのを、わざわざ見つけて連れ戻してのことだ。

しかし急に山代官になったって、当たり前だがなにをしたらいいかさっぱりわからない。すべて部下任せ、部下の言いなりであった。怠け者の弥蔵にとっては、願ったりかなったりだったが。

弥蔵がぐーたらなのを良いことに、下役人は管理する村々の税を重くし、時には金品女などの賄賂も受け取って私腹を肥やした。そして税を取り立てるたびに、新しい代官の厳しさ冷酷さを村人に告げ、脅した。賄賂も、弥蔵がそれを欲しているというニュアンスで要求するのだった。
ただごろごろしてばかりの弥蔵だったが、重税を課し、酷薄な取り立てをし、事あるごとに賄賂を求める悪代官として、怨嗟(えんさ)の対象となった。

さて、元和八年、鳥居忠政は、最上氏を追い出した後の出羽山形に転封されることになった。磐城平12万石から22万石への加増。伊達政宗らの監視を強固にするための、幕府の施策である。

弥蔵(の下役人)に苦しめられていた村の誰かが、この機会に弥蔵を殺そう、と言い出した。村人たちは皆、それはいい考えだと頷いた。たちまち周辺の村々の総意となった。村の総代たちは鳥居家の家老に、転封に際して弥蔵を貰い受けたい、と訴えた。

家老は驚き、困り果てた。
断れば一揆に発展するかもしれないが、家名に傷が付くのでそれは避けたい。また村人たちの言い分には理が通っている面もある。賄賂が事実なら放ってはおけない。が、山形に移る準備で多忙を極める折、時間をかけた取り調べは事実上不可能だ。そもそも時間をかけて取り調べていては、一揆に発展する可能性があるが、家名に傷が付くのでそれは……。
思考のループに陥った家老。段々腹が立ってきて「勝手にしろ!」と総代たちに告げ追い返した。

総代の報告を聞いて、村人たちは沸き立った。お許しが出たぞ! と。
すぐさま、足の速い者たちが近隣の村々に「明日の晩、弥蔵の家に火をかける。弥蔵をぶち殺したいヤツは集まれ」と触れ回った。
これを聞いた血の気の多い者は皆、ナタを研いだり、竹槍を作ったり、放火のために柴を集めたりなど、夜を徹して準備をした。祭の前日のような盛り上がりだった。

一方。
家老は総代たちを帰した後、やはり領内でこんなことが起きるのはイカン、と思い直し、弥蔵の家に使いを出した。おまえ、村人たちが殺しに来るから、先に山形に行っとけ、と知らせるためである。弥蔵と家人たちは荷物をあらかたまとめ、夜半のうちに大慌てで逃げていった。

問題の晩。真夜中である。

大勢の村人が、武器や柴を携え、弥蔵の家を静かに取り囲んだ。弥蔵(の下役人)に苦しめられた村の者もいれば、関係ない村の者も混じっていた。包囲の輪を、ゆっくりと狭めていく一同。
なんか変じゃねえか? と誰かが立ち止まり、言った。
そういや静かすぎる、人の気配がない、と別の者がつぶやいた。
一人がこっそり家のなかを覗いてみた。
……もぬけのからである。人っ子一人いない。それどころか、金目になりそうな家財道具すらない。空き家の風情。
やられたっ!

皆一様に、肩を落とした。そりゃねーべ、と。
意気消沈し、すごすごと帰り始める村人たち。

とそのとき、よその村の者が、はっ、と思いついたように顔をあげ、言った。
「うちの村にも悪い役人がいる。そいつは弥蔵とも仲が良い。内藤隼人という。こいつにつぶされた農家はいっぱいある。弥蔵の代わりにそいつを殺そう

なんで関係のない村の者がそこにいるんだ? という初歩的な疑問はともかく。
消化しきれずくすぶっていた殺意が、一気に燃え広がった。
皆は元気を取り戻し、それがいい、そうしよう、と口々に言った。
暴徒とはそういうものだろう。

問題の場所は下高久(しもたかく)。滑津川の河口近辺である。
村人たちは、寝静まる内藤隼人の家を取り囲み、一気に火をつけた。
ほとんどは焼け死に、裾を燃やしながら家からはい出てきた数名は、竹槍で地面に縫い止められ、ナタで刻み殺された。犠牲者は十八名。

一人だけ生き残った者がいた。十歳になる隼人の娘で、たまたま厠に出ていた折に、騒ぎに気付き、藪に身を潜めていたのである。
燃えさかる家を取り囲んだ村人たち。彼らが興奮しお祭り騒ぎになっている隙をつき、娘は逃げ出した。そして夜通し歩き続け、城下の家老の家にたどり着いた。

城内は大変な騒ぎになった。こうなると一揆と変わらない。速やかな鎮圧あるのみである。
家老は自ら武士・足軽を引き連れて、電光石火の勢いで下高久にやってきた。
そして、昨夜の興奮さめやらぬ村人たちを片っ端から捕まえ、年齢性別罪のあるなしを問わず、滑津川の土手で次々と「(はりつけ)」にしていった。

磔とは、人を木に縛り付けて、二本の槍で両脇腹から肩に突き抜けるよう刺し、という処刑方法である。死体は見せしめとして、数日晒すのがならいだ。
この虐殺の現場は、百間土手と呼ばれていた。
土手は大正時代後期に崩され、近隣の小学校周辺の土地造成に使われ、今はない。

……。

という百間土手の場所。探し回った末に見つけた、たぶんここ、と思える場所が下の写真でーす。

Nametsu River, Shimo-Takaku, Iwaki, Fukushima
Nametsu River, Shimo-Takaku, Iwaki, Fukushima Nametsu River, Shimo-Takaku, Iwaki, Fukushima

この虐殺現場を見つけるのは大変だったよ、ふー。
ネットに情報がないし、いわき在住の人に聞いても知らないみたいだったし、地図であたりをつけて向かっても道は分かりづらいし。
もし、百間土手はここじゃねーよ! という方がいらっしゃったら、コメント欄にて是非ツッコミをお願いします。そして情報をください。行くので。

写真ですが、左下が滑津川にかかる高久橋(小さい橋です)のあたりから、処刑が行われた地蔵院の裏手方面の川岸を撮ったもの。上が現場と推測されるあたりそのもの。右下は、上の話に出てきた小学校。
迷惑かけるとあれなので、小学校の名前は伏せ、問題の場所の地図リンクは載せないでおきます。
まぁ調べればすぐ分かるけど。
ちなみに周辺各所で写真を撮りまくっていたら、すごく目立ってました。観光で人が来るような場所ではないです、どう考えても。

以上、執筆のための資料まとめでした。

参考文献:
『いわきの伝説と民話』 いわき地方史研究会 ISBN4-924912-18-2
ほか

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著者: mhase

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2008年12月6日 / 12月17日~23日
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