戯曲の書き方講座、4回目です。
戯曲講座ではなく、PCなどで書く時の、書き方講座です。
1回目は、文章と見栄えは徹底的に切り離す、という鉄則を紹介しました。
2回目は、文書は見出しで区切って管理・把握しよう、という話をしました。
3回目は、道具の手入れは大事なので、ワープロソフトはきちんと設定をして使おう、という話でした。
今回からは、数回にわけてTabキーの話をしていきます、たぶん。
タブ→
全角スペース→
改行→
超ざっくり歴史的な使われ方の話
タイプライターの時代から、Tabキーはありました。
あらかじめ設定した位置まで文字送りするためのキーでした。
用語説明のような「用語」と「その説明」、すなわち「小見出し」と「それに属する文章」がセットになっているような文書をつくりたいときに、タブキーは便利でした。
いや便利というよりも、必要だった、と言うべきかな。
例えばこういうことです。
袖舞台の上下(かみしも)にある一時的な待機スペース。
表のような、行と列の項目が明確な文書をつくりたいときにも、タブは活用されていました。
あ、行とは、横に広がっていくまとまりのこと。列とは、縦に伸びていくまとまりのことです。
通常は、1行ごとにひとつのなにかを意味づくり、列で意味のなかの項目を表現します。
月名陰暦英名 1月睦月January 2月如月February 3月弥生March
エクセルのような表計算ソフトでは、今なおこのTabキーによる列送りの機能は生きています。ぼくもエクセルを使うとき、列間はTabで移動しています。(慣れるとこの方が入力が早いです。)
マウスがない時代でも表計算ソフトはあったわけですが、当時は「Tabでセル間移動」というのが当たり前でした。シフト押しながらカーソルキーで入力したい範囲を選択し、データを入力してタブ、データを入力してタブ、データを入力してタブ……。そんな風に操作していました。
文字データとしてのタブ
PCが世に現れ、テキストエディタやワープロソフトが登場してからも、タブはほぼ同じ用途で使われています。
あらかじめ設定した位置まで文字送りするためのキーであり、文字。
「あらかじめ設定した位置」というとまどろっこしいので「タブ位置」と呼びましょう。
文書として文字を打つとき、タブもスペースも改行も、デジタルデータ上はすべて文字、という話を1回目でしました。
タブは、「次のタブ位置までスペースを空けろ」という意味の文字です。
改行は、「次の行の先頭までいけ」という意味の文字です。
例えば、
1月睦月January
という文字データがあったら、
1月(次のタブ位置までゆけ!)睦月(次のタブ位置までゆけ!)January (次の行の先頭までゆくのだ!)
という意味だと解釈されて、テキストエディタやワープロソフト上であらかじめしておいた設定通りに表示されます。
区切り、という意味もある
タイプライター時代、Tabは「次のタブ位置までゆけ」というキーでした。
デジタルデータとしては、打った文字はすべてデータとして記録されていくことから、別の意味も生じました。「区切り」です。
先述の「小見出し+その見出しに属する文章」のワンセットである例や、表の例を思い出してください。「」となっている部分を、区切り、と読み替えることもできるでしょう?
現に、テキストエディタで書いた、
1月睦月January
という文字データをコピーし、エクセルに貼り付けると、正しく解釈され、1セル毎に、1月、睦月、Januaryが入力されます。
あれ? 待って、台詞って……
お気づきの方もいるんじゃないかと思いますが、戯曲中の台詞って、まさしく「小見出し+その見出しに属する文章」のワンセットですよね。小見出しが登場人物名にあたります。
タブを使えば、見栄えが整うだけでなく、「意味」としても整います。
台詞のデータとしてのありようを厳密に定義すると、例えばこうなります。
登場人物名+タブ(=区切り文字)+台詞本文+改行文字(=1つの台詞を区切る文字)
明快です。
当講座の1回目で説明した、スペースや改行を駆使するよろしくない書き方だと、例えばこうなります。
男2みんなでデリケートな話もするんだよ、仕事がらみの、ミー ティングも兼ねてんだから
不定数のスペースで区切り、言葉の途中でも容赦なく改行。手書きと変わらない、デジタルデータとは呼べない書き方です。なので、検索に引っかからない言葉ができ、言葉を修正したい時はスペースや改行も打ち直し、レイアウトを変えてもまた打ち直し、という……。
上のよろしくない例を、正しいあり方にしてみましょう。
男2みんなでデリケートな話もするんだよ、仕事がらみの、ミーティングも兼ねてんだから
こう書いた方が、まず打鍵数が少ない。見た目もスッキリしますし、書き手は文字を打つことだけ考えていられます。
1回目で触れたような、文字の大きい台本を印刷するときでも、ワープロソフト側が正しく設定されていれば、見栄えは崩れません。
見栄えに依存しない、データのあり方、というわけです。
次回はインデントの使い方?
でも待ってよ! 長い台詞の2行目はどうなるの? 2行目以降も段を揃えたいよ!
はい、まったくその通りです。
そこはワープロソフトの「ぶら下げインデント」という機能を使います。
次回はその説明をしたいと思います。
おまけ ちなみにト書きは?
台詞の記述上の定義として、例えばとした上でこう書きました。
登場人物名+タブ(=区切り文字)+台詞本文+改行文字(=1つの台詞を区切る文字)
私自身はこの定義で書いていますが、別に、ぜったいこうじゃなきゃいけない、というわけではありません。
入力の楽さ、文字だけの時の見え方のわかりやすさ、デジタルデータとしての利便性などを兼ね備えた書き方ならば、他の書き方だって別によいと思います。
登場人物名「台詞本文」+改行文字、とかね。
ただし、「」で台詞をくくる書き方だと、次回で説明する「ぶら下げインデント」の恩恵は受けられません。
ちなみに私の場合、ト書きはこう定義しています。
タブ+ト書き本文+改行文字(=1つのト書きを区切る文字)
これも、「ぶら下げインデント」の使用で、長文のト書きでも整った見栄えの印刷台本をつくれます。
というわけで、次回また。
あ、そうだ。
fbでもtwでもコメント欄でもいいのですが、フィードバックをなんらか頂けると、どうもアレですなぁ、次の執筆がはかどるようです。(チラッ)
ではまた。
コメント
タブって、使ったことありませんでした。すごくわかりやすくて、ためになりました。僕の場合、いつも「」でセリフを書いていました。(いまも)それなので芝居の台本を印刷するときには、印刷してくれるところで、カギ括弧をわざわざ取ってもらってました。とても参考になります。次の「ぶらさげインデント」早く、知りたいです。
ありがとうございます。ご感想を頂けると大変励みになります。
話し言葉を「」でくくる方法は、日本語表現としても正しく、データとしてもわかりやすい形だと思っています。ワープロソフト側が自動で台本フォーマットに直して表示、ってしてもいいのにって思います……需要はかなり少なそうですが。
ぶらさげインデントの話、いましばらくお待ちください。がんばります!
こんにちは
学校職員です。
いつも、登場人物名とセリフをどのように分けるか、悩んでおりました。
段組みにしたり、表にいれたり…
この方法で、すっきりしました。
ありがとうございました。