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戯曲をEPUB3化する道(10) – 値段を算出する方法を考えてみた

戯曲をEPUBにするぞー、おー。

前回も書いたけど、製作中のテキストtoEPUB3コンバーター「Θέσπης」(テスピス)で作成したEPUBファイルが、アマゾンのKDP(Kindle Direct Publishing)に無事登録できた。
あと幾つかKDPを使う上で手続き上必要な項目を埋め、ポチってやれば、販売開始状態になる。
販売までたどり着けたら、Θέσπηςを正式公開するつもり。

値段決めなきゃなー。電子戯曲の販売価格のことね。

セリフ数、文字数、上演時間数などを代入すると、推奨価格を計算するような数式をつくろうかしら。そんで、Θέσπηςに、値段の提案ツールとして搭載したりして。

Θέσπηςは、アップロードされた戯曲を解析して、EPUBファイルに仕立てる。その過程で、登場人物名、セリフ数、セリフの文字数が算出される。こういう解析と数字出しって、DOS時代から自分でコマンドラインツール作ってやっていたよ。知りたいじゃない? セリフの数と文字数、登場人物ごとに。

註: 2015-06-04 文字数の算出方法にバグがあり、数字を修正。詳細は末尾の「追記」に。

以下、2014年4月の『せんそういろいろ』で上演した『宣戦布告』の例。上演時間20分。Θέσπηςによるレポート中の表を、そのままコピペ。

名称 台詞数 台詞の文字数
男1 184 3029
女1 152 2635
男2 114 1618
合計 450 7282

以下は、2015年4月『健康いろいろ』で上演した、『202X年、帰ろう』の例。上演時間50分。合計だけ貼り付けるわ。

台詞数 台詞の文字数
合計 879 15837

ふむふむ。他、違う上演時間のものも計算し、合計だけを表にしてみるか。
ト書きの文字数も算出

台詞数 文字数 ト書き 登場人物数 上演時間
(A) 宣戦布告 1450 7282 723 3 20
(B)水の盆 491 11646 1133 3 30
(C) 202X年、帰ろう 879 15837 2045 7 50
(D) 「帰ろう」の倍サイズの戯曲(仮) 1758 31674 4090 14 100

数字を出した5つの項目はどれも独立して、労力と相関関係があると言えるかもしれない……ってザ・屁理屈。

賛否両論むちゃくちゃありそうだけど、 こういった数値を元に仮の値段を算出できないか、単純な数式を無理矢理考えてみようかな。(D)の戯曲の値段が、(C)の値段を単純に倍にしたものにならないようにしたいな。量が多い方にお得感を作りたい。

仮に、こういう手順を考えてみた。

  • セリフ数の平方根
  • 文字数の平方根
  • ト書きの文字数の平方根
  • 登場人物数 × 10
  • 上演時間(分)

平方根を求めているのは、数字がでかくなればなるほどお得になる工夫。
で、これら5項目の合計値を出し、1桁目を四捨五入したものを、「基礎価格」としてみようか。

こうなる。

台詞数 文字数 ト書き 登場人物数 上演時間 基礎価格
(A) 宣戦布告 1450 7282 723 3 20 230円
(B)水の盆 491 11646 1133 3 30 280円
(C) 202X年、帰ろう 879 15837 2045 7 50 390円
(D) 「帰ろう」の倍サイズの戯曲(仮) 1758 31674 4090 14 100 610円

さらに、作者(発行者)の事情や経験やフィーリング要素や製作コストも盛り込もうか。

変数αと変数βを用意。

αは、上述の基礎価格に乗算する値。基礎価格を見て、たけーよと思うなら、αは1より小さい数にする。0.7とか0.8とか。安いよと思うなら、αは1よりでかい数にする。1.2とか1.5とか。

βは、基礎価格に単純にプラスする値。表紙を発注したのでコストを回収したいとか、電子戯曲代(?)として50円もらうとか、そういうのがあるなら、βとして乗っけちゃえばいいんじゃないかしら。

つまり最終的に、「基礎価格 × α + β = 参考価格」 となる! なんちゃって。

でもまぁこんなアホな方法で本の値段を決めようとする人なんて、そうはいないよね……。

さて。

こんなアホな計算をしてみたのは、価格をフィーリングだけで決めたくないよね、というのがひとつ。

もう一つは、電子本の値段ってなんだろう、ってのをアホなりに考えてみた結果。

紙の本の場合、人件費や印刷費用など原価その他などの予算がわりと目に見えやすい形あって、何部刷って何部売るからだいたいこの値段、ってなると思う。

本の値段はソフト(中身)の値段だよ! コスト云々じゃないんだよ! という買い手側の心意気は素晴らしいと思うし、ぼくもそう考える方だけど、実際はやっぱりいろんな事情、時に大人の事情で値段が決まっていく。

で、大手出版社が出している紙の本を電子書籍化したものって、ちょっと安いだけとか、紙の本とあまり変わらない値段で売られていたりする。これはまぁ、紙の本と電子本の両方を包括的に扱って価格設定しているんだろうし、そんな爆発的に売れる世界では(まだ)ないから、しょうがないかなぁ、と納得はできる。電子本の価格も、紙の本に較べてあんまり安くされても、長い目で見たら業界全体の首を絞めることになりかねないし。ケチると今度は、市場が育たないという問題もあるけど……。

一方、なんで値段がほぼ同じになるんだろうな、フットワーク軽くさぁ、新刊だって、がくっと安くなったり、逆に紙の本ではできないことをやっていてもっともっと高くなったり、いろいろあってもいいのに、という疑問も残る。あ、でもそういう電子本もあるか。

ともかく、紙の本をベースにせず、電子書籍だけで売る場合って、なんか別の値段の考え方があってもいいよなぁ、とも思った。

商業ベースで売るなら、コストと販売数の見込みで値段算出するんでもいいし、既に相場があるジャンルなら、相場に則って値段を決めてもいい。うん、確かにそうだ。が、新しい出版・読書の形態なんだから、紙の本のやりかたにとらわれず、いろんな試行錯誤がガンガンあって良い、とも思う。ましてや、今ぼくが手を付け始めようとしているのは、ほとんど儲けが見込めない、戯曲っちゅうジャンルなんだからさぁ、と。

という思索の過程が、今回の記事でした。

おまけ

Θέσπης(テスピス)で生成したEPUB版の「岸田國士『紙風船』」を配布してみます。

以下の表紙画像をクリックすると、ダウンロードできます。
表紙も、Θέσπης内の「表紙メーカー」ツールでつくりました。

cover_Kamifusen

EPUBリーダー(リーディングシステム)がないと読めませんが。

テキストファイルはこちら。

Θέσπης記法のテキストファイルにした、岸田國士『紙風船』

ほいじゃまた。

ちなみに今は、宮城県登米市の南方仮設住宅ってところで出張上演してきた帰り道です。
新幹線のなか。

2015-06-04 追記

この記事書いたあと、なーんか変だなぁと思って調べてみたら、文字数の計算方法に誤り発見! 約2倍になっとった……。

で、計算方法を直して、シーンごとのト書きの行数・文字数も算出&レポートするようにした。

そして記事本文も修正しました。

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